AI情報交換会のLT資料 2026年10月

AIを1つ使う開発から、
任せて回す開発へ

20並列で学んだ役割分担と仕組み

うぇるち(@welchi_)

→で次へ、←で前へ、Fで全画面、Tで明暗の切り替え。スクロールでも読めます。

01 使っている物とお金

AIのサブスクだけで月13〜14万円

使っている物メモ
Claude Max 20xOpus。統括役・相談役・評価役に使う
ChatGPT ProSol。作業役・レビュー役に使う
案件側のAPIサブスクとは別に、案件の費用で使っている
  • サブスクだけで月13〜14万円。案件側のAPIも合わせると、もっと使っている。
  • 生産性は測っていないけど、体感では30倍くらい。そう考えると安い投資。いや、高いけど。

01 使っている物とお金

モデルは「何並列で何日もつか」で選ぶ

モデル20xプランの持ち(体感)使い所
Astra1並列で1〜2日で尽きる賢くて実装も強い。使用量が重いので、今はほとんど使っていない
Opus 5.52〜5並列で2〜3日もつ統括役・相談役。デザインや、長時間の特定タスク
Sol(GPT-6.1)10〜20並列で2〜3日もつ作業役・レビュー役。20並列でも週の使用量に余裕がある

2026年10月時点の自分の使い方での体感。測った数字ではない。

01 使っている物とお金

作業役は、もっと安くできるかもしれない

まだ試していない、考えている段階の話。話の種として。

外せない物

  • Opusの統括役は外せない。
  • Computer Useが使えるCodexも、全部は解約しないと思う。
  • この案件で試した範囲では、研究系のタスクはSol 6.1・Astra・Opus 5.5でないと無理だった。どれもTerminal-Bench-Science(科学の研究作業をAIにやらせて測るベンチマーク)で上位のモデル。スコアの低いAIに任せたら、AI判定エンジンの性能が全然出なかった。

安くできそうな所

  • 普通の業務システム開発なら、作業役はOpenCodeやHermes Agent、Claude Codeなどで、DeepSeekのような安いモデルを使っても十分かもしれない。
  • 作業ごとに向いているAIを切り替えれば、コストはもっと下げられるかもしれない。

案件によっては、使ってよいモデルに条件がある(データの扱いや、提供元の国など)。切り替える前に確かめる。

02 今の案件の規模感

全部読むのは、もう無理

AIで判定を行う業務システムのR&D。インフラ、バックエンド、フロントエンド、AIの研究まで全部見ている。

約370万行
AIが書いた行(延べ)
約2か月の全部の枝の追加の合計。データは除き、同じ変更の重なりを含む。平均で1日5万行ほど
約58万行
今のdevelopに残っている量
内訳は、判定エンジンと研究が約32万(テストを含む)、バックエンド約7万、フロントエンド約6万、インフラ約1.4万、開発の道具と文書が約11万
約4万行
本番の判定の入口からつながるコード
判定エンジンと研究のコードのうち、本番の判定の入口からimportをたどった範囲。テストは除く
5,699
commit
全部の枝。多い日は1日502、多い時は1時間に61。developだけだと1,328
310個
実験のtag
実験ごとにtagを付け始めてから約3週間。多い日は1日127個
261 / 229
PR / Issue
ほとんどが最近の2週間ほど。多い日はIssueとPRで1日67件

研究系なので、判定エンジンは実験の使い捨てコードが大半で、本番の判定の入口からつながるのはごく一部。もちろん全部は読めない。

02 今の案件の規模感

20並列で、何をしているか

量の大半は、研究の実験。改善の案を枝で作り、正解のデータで点を付けて比べる。ほとんどは捨てる。

判定の精度を上げる実験

案を並べて試し、点で比べる

判定の説明文の改善

画面に出る文は、人が前と後を見て決める

速さと費用

1件にかかる時間とAPIの費用を下げる

画面とAPI

機能の追加と直し

配備とインフラ

環境・権限・見張り

レビューとハーネス

別のAIのレビューと、チェックや記録の仕組みの直し

20並列が効くのは、案を並べて試せて、良し悪しを点で決められる仕事。1人でインフラから研究まで見ていることも、並列が増えた理由。普通の業務開発なら、2〜3並列で十分だと思う。持ち帰ってほしいのは、規模より仕組みの方。

02 今の案件の規模感

1つの作業の流れ(実験の場合)

  1. 人が相談役に話す。例えば「見落としを減らしたい」。
  2. 統括役がIssueを立てて、作業役に頼む。作業役は、Issueごとに新しい会話と枝で動く。
  3. 作業役が案を作り、commitしてtagを付けてから実験を回す。
  4. 評価役が、正解のデータで点を付ける。作業役には正解を見せない。
  5. 別のAIがレビューする。点が上がっても、ほかが悪くなっていたら採らない。
  6. 判定を大きく変える物は、人が採るかを決める。画面に出る文は、人が前と後を見て合否を出す。
  7. 捨てた案も、記録とtagを残す。同じ案を2回試さないため。

人が見るのは、方針と、採るかどうかと、画面に出る言葉。コードの細部は見ていない。

03 AIの体制とモデルの所感

自分が話すのは「相談役」のAIだけ

自分決める・承認する・夜は呼ばれたら起きる
↕
相談役(Opus)自分の窓口。決めたことを記録して、統括役へ渡す
↓
統括役(Opus)AIのPM。仕事を分けて頼み、結果を確かめてマージする
↓
作業役(Sol)実装と調査。Issueごとに新しい会話で、10〜20並列
評価役(Opus)AIの性能の評価を回して、費用を記録する
レビュー役(Sol)作業役とは別の会話で見る
  • 統括役の会話は、ほとんど見ていない。
  • 指示は相談役から統括役へ、統括役から作業役へ流す。作業役は、自分の統括役以外の指示を受けない。
  • 作業とレビューは別のAIにする。自分が書いたPRは、自分でマージしない。
  • 夜は自動で回して、昼は自分が手綱を握る。

03 AIの体制とモデルの所感

役割に当てるモデルは、何度も変えた

  1. Sol 1人
  2. Solが統括、小さいモデルが作業、Solがレビュー
  3. Astraが統括とレビュー
  4. Astra 1人
  5. Astraが統括も作業も。高すぎた
  6. Astraが統括、Opusが作業
  7. Solが統括
  8. 今Opusが統括、Solが作業とレビュー

今の形に入れ替えた理由

統括が細部にこだわって、作業が進まないことが続いた。詳しくは次のページ。

入れ替えて分かったこと

ルールにモデル名を書くと、入れ替えるたびに全部直すことになる。ルールは役割(統括役・作業役・レビュー役)で書いて、どの役割にどのモデルを当てるかは、1つの表だけに書く。

03 AIの体制とモデルの所感

統括役をOpus 5.5に替えたら、かなり良かった

Astraが統括だった時

  • 簡単な作業でも、作業役に細かいチェックを繰り返して、10時間近く進まないことがあった。
  • マージの基準を読み飛ばすこともあって、ストレスが多かった。
  • ハーネスが前のモデル向けだった影響もあるかもしれない。

Opus 5.5が統括になってから

  • 上のようなことは、ほぼ起きない。
  • 作業の分け方が、5並列くらいから20並列くらいになった。とにかく気が利く。
  • 夜は無理に人を起こさず、できる所から進めて、確認したいことは朝にまとめてくれる。ちゃんと寝られる。
モデル強い所弱い所今の役
Opus 5.5視野が広い。気が利く勘違いや抜けが少しある。実装はSolの方が強い統括役・相談役
Astra・Sol賢い。実装が強い視野が狭め。Opus 5.5ほど気が利かないSolが作業役・レビュー役

自分の使い方での印象。OpenAI系は実装、Anthropic系は全体を見る役、という分け方になっている。

04

ハーネスエンジニアリング

AIを1つ使う時から役に立つ考え方。自分の場合は、並列にして長い時間任せ始めてから、自前の仕組みが一気に増えた。

04 ハーネスエンジニアリング

AIに長い時間任せると、こうなる

よくあること

  • 「できました」と言うけど、実は動いていない。テストを実行していない。
  • 頼んでいない所まで直す。自分を縛るルールまで書き換える。
  • 同じミスを何度もする。注意しても、次の会話では忘れている。
  • 自分の書いたコードを、自分でレビューしてOKを出す。

並列・夜間にすると増えること

  • AI同士がぶつかる。名前の一致でプロセスを止めて、別の会話のAIの作業まで止めた。
  • 夜中に止まって、朝まで誰も気づかない。認証が切れたのを、AIが朝まで知らせなかった。
  • 実験データでSSDが埋まる。1回の実行で25〜38GB使っていた。

AIへの指示の文を足すだけだと、また抜ける。だから仕組みで防ぐ。

04 ハーネスエンジニアリング

ハーネスエンジニアリングとは

harnessは馬具のこと。馬の力を、行きたい方向へ使うための道具一式。AIで言うと、モデルの周りに置く道具・ルール・検査・記録・知らせの仕組み全部を指す。

OpenAIの記事の例

  • 人が手で書いたコードは0行で、社内向けの製品を5か月で作った。
  • 約100万行、約1,500 PR。最初は3人で、1人1日平均3.5 PR。
  • 合言葉は「Humans steer. Agents execute.」。人は舵を取り、エージェントが実行する。
  • 失敗したら「もっと頑張れ」とは言わない。足りない能力は何かを考えて、エージェントが読めて、機械で守らせられる形にする。

エンジニアの仕事が移る

  • コードを書くことから、環境を設計すること、意図を伝えること、エージェントが確実に働けるフィードバックの仕組みを作ることへ。
  • モデルが替わっても、仕組みは残る。
呼び方考える範囲
プロンプト1回の指示をどう書くか
コンテキストAIに何を、どれだけ読ませるか
ハーネスAIをどう動かし、どう確かめ、どう止めるか

出典:OpenAI「Harness engineering」(2026年2月)

04 ハーネスエンジニアリング

よく言われるコツ

入口のファイルは目次にする

大きいAGENTS.mdを1枚作るのは失敗した。100行くらいの目次にして、詳しいことはdocs/へ。

AIから見えない知識は、無いのと同じ

Google Docsやチャット、人の頭の中にある決めごとは、リポジトリに書く。

ルールは仕組みで守らせる

linterや構造のテストで止める。エラーの文に直し方を書いて、AIに読ませる。

AIが自分で確かめられるようにする

画面・ログ・メトリクスをAIが直接見る。ブラウザを操作させると、大きく良くなった。

長い作業は記録で引き継ぐ

進み具合のファイル、機能の一覧、git commitを残す。1回に1機能ずつ進める。

定期的に掃除する

守る原則を書いておき、定期的に動くAIがずれを探して、直すPRを出す。

出典:OpenAI「Harness engineering」、Anthropic「Effective harnesses for long-running agents」。OpenAIの記事自身も、このやり方はそのリポジトリの作りと道具に強く依存していて、そのまま他に当てはまるとは限らない、と書いている。

04 ハーネスエンジニアリング

この案件で困ったことと、やったこと

困ったことやったこと
AIが、自分を縛るルールまで書き換えた変えてよい範囲を3つに分けた。成果物はAIが書く。ルールと仕組みはAIが提案して人が承認する。権限は人だけが変える
作業したAIが、自分でマージした作業役とレビュー役を別の会話にした。マージの前に、変更の種類を機械で分けた。文書の中身と実験の記録だけなら、統括役がマージしてよい。AIのルール・権限・環境・お客さんに関わる物は、人が決める。アプリの変更は今、チェックとレビューを全部通った物だけ、期限つきで統括役に任せている
AIが、全部を止めるスイッチを黙って作っていた。自分が「怖い、頼んでない」と言った止める仕組みを入れたら、何を・なぜ・どこまで止めるかを、その場で説明させる
未実行や失敗を「問題なし」と報告した未実行・待ち・失敗を成功と書かせない。終わった状態だけで判定する
同じ失敗を繰り返した実際に起きた失敗を再現テストにした。ルールやモデルを変えるたびに回して、前と比べる
夜中に止まって、朝まで気づかなかった人しか直せない止まりの時だけ、スマホを鳴らす。夜は2分ごとに最長10分
AI同士がぶつかった止めてよいのは自分が起こしたプロセスだけ。作業場所(git worktree)はIssueごとに分ける
SSDが埋まった実行の前に空きを測って、足りなければ止める。大きいデータは外付けのディスクへ

「こうした方がきれい」だけでは足さない。実際の失敗から足して、ルールごとにきっかけを残す。

スキルやプロンプトも同じ考え方で試せる。OpenAIのスキルの評価の記事は、10〜20個の課題(実際の失敗から作る物を含む)を用意して、変えるたびに点数で比べることを勧めている。「良くなった気がする」で決めないため。

04 ハーネスエンジニアリング

ルールを足すだけだと、重くなる一方

事故のたびにルールを足すと、厳しい側にだけ増えていく。遅くなったことは見えない。何度言っても望んだ実装にならないので、指標を入れた。

対象見る指標
製品DORAの指標。今は5つ(変更のリードタイム、デプロイの頻度、失敗したデプロイからの復旧時間、変更の失敗率、デプロイのやり直し率)。この案件では、元の4つから始めた
研究効いたか、かかった時間と費用、デグレ、手順の誤り
ハーネス同じ失敗の繰り返し、マージ前のチェックの待ち、使用量、自分の待ち
  • ハーネスの指標は12個までにして、週に1枚にまとめる。
  • 数えるのはscriptで、今ある記録だけを使う。数えるための新しい記録はAIに書かせない。
  • ハーネスを変える時は、どの指標を動かすかを1行書いて、1週間後に確かめる。
  • 例えば、配備はDev・検証環境とも15分、戻しは10分を目安にした。

DORAの指標は、以前は「4 keys」と呼ばれていた。2023年に「サービスの復旧時間」が「失敗したデプロイからの復旧時間」に変わり、2024年に「デプロイのやり直し率」が加わって5つになった。やり直し率は、本番の問題のせいで出した予定外のデプロイの割合。

OpenAIの記事でも、マージを止める関門は最小限にしている。直すのは安く、待つのは高いから。ただし、それはスループットが高い環境だから言えることで、そうでなければ無責任だ、とも書いている。

04 ハーネスエンジニアリング

AIは、チームに既にある物を増幅する

DORAの2025年の報告では、回答者の90%が仕事でAIを使い、80%超が生産性の向上を感じている。一方で、AIはスループットとは正の関係、デリバリーの安定性とは負の関係だった。強みも、機能不全も増幅される。

DORA AI機能モデルの7つ中身この案件では
明確で周知されたAIポリシー何を期待し、どの道具を使ってよいかが伝わっているAIが変えてよい範囲を3つに分けた。使わないモデルを決めた
健全なデータエコシステム質が高く、使いやすい社内データデータの置き場の地図を作った。評価の正解データは別の場所に置く
AIがアクセス可能な社内データAIを社内の文書やコードに安全につなぐAGENTS.mdを地図にして、docsを役割で分けた
強固なバージョン管理プラクティスこまめなcommitと、戻すことに慣れている実験ごとにcommitとtagを残す。不採用の枝も消さない
小規模バッチでの作業AIは大きな変更を作れるが、確かめるのは難しいIssueごとに枝と会話を分ける
ユーザー中心の視点無いと、AIを入れても成果が下がりうる精度だけでなく、使う人の作業時間で効果を見る
質の高い社内プラットフォームAIの効果を組織に広げる共通の基盤このハーネスそのもの

出典:Google Cloud「Introducing DORA's inaugural AI Capabilities Model」と「Announcing the 2025 DORA Report」。日本語の名前はGoogle Cloudの日本語ブログの表記に寄せた。

05

コンテキストエンジニアリング

AIに、何を、どの順で、どれだけ読ませるか。

05 コンテキストエンジニアリング

AIエージェントを普通に使うと、こうなる

  • 会話が長くなると、前の指示を忘れる。答えの質も落ちる。
  • 関係ないファイルまで読んで、迷う。遅くなって、お金もかかる。
  • 古い文書と新しい文書が食い違っていると、古い方に従う。
  • 自動の圧縮の後に、大事な決めごとが抜ける。圧縮の後に、急に英語で返事をし始めたこともある。
  • 新しい会話のたびに、同じ説明をし直すことになる。

AIが一度に読める量には限りがあって、たくさん入れるほど、1つ1つへの注意は薄くなる。Anthropicはこれをcontext rotと呼んでいて、どのモデルでも起きる。性能は崖のように落ちるのではなく、坂のように少しずつ落ちる。

05 コンテキストエンジニアリング

コンテキストエンジニアリングとは

AIが推論するたびに渡す物全部(指示、ツール、外部のデータ、会話の履歴、メモ)から、何を入れて何を外すかを選び続けること。

プロンプトエンジニアリング

指示の中身と書き方を設計する。

コンテキストエンジニアリング

エージェントが何十回も回る間、毎回、手元に何を置くかを選び直す。

  • 注意には予算がある。読ませる物を1つ足すたびに、ほかへの注意が減る。
  • 目標は、欲しい結果を出すのに必要な情報を、なるべく少なく、密度の高い形で渡すこと。
  • DORAの日本語のブログは、AIを社内の文書やコードにつなぐことを「コンテキストエンジニアリング」と呼んでいる。

出典:Anthropic「Effective context engineering for AI agents」(2025年9月)

05 コンテキストエンジニアリング

よく言われるコツ

CLAUDE.mdは短く

各行を「消したらAIが間違えるか」で選ぶ。コードを読めば分かることは書かない。

スキルとフックに分ける

時々要る知識はスキル、毎回必ずやることはフック。CLAUDE.mdは助言で、フックは必ず動く。

必要な時に読ませる

最初に全部読ませない。場所と探し方だけ渡して、要る時に取りに行かせる。

話が変わったら出直す

関係ない作業に移る時は/clear。2回直して駄目なら、分かったことを入れて新しい会話で。

調べ物は別のAIへ

たくさん読む調査はサブエージェントに任せて、要約だけを戻させる。

確かめる手段を渡す

テスト、ビルド、スクリーンショット。無いと人間が確かめ係になる。レビューは別の新しい会話で。

出典:Anthropic「Effective context engineering for AI agents」、Claude Codeのドキュメント「Best practices」

05 コンテキストエンジニアリング

この案件でやっていること

文書の置き方

  • 入口のAGENTS.mdは地図だけ。作業ごとに「最初に読む物」を案内する。
  • 大きい文書は、先頭に要約と目次を置いて「ここまで読めば足りる」の印を付ける。入口の文書の大きさは、検査で止める。
  • 同じ情報は1か所だけに書く。用語の表、どの役割にどのモデルを当てるかの表、など。
  • 何が起きたかの記録と、どうするかのルールを分ける。古い指示を、今の指示と読ませない。

会話と記憶

  • 作業役はIssueごとに新しい会話。終わった会話は別のIssueに使い回さない。
  • 統括役と相談役は、毎日新しい会話に替える決まりにした。
  • 引き継ぎのメモは1日1回で、普段は自動の圧縮に任せる。
  • 覚えておくことは、1件に1つの事実でメモリに書く。今は360件くらい。
  • 評価の正解データは、作業役にも判定エンジンにも見せない。点を付けるのは評価役。見せると、答えを見た状態で「精度が上がった」になってしまう。

コツと逆になった所もある。研究の作業は、サブエージェントや小さいモデルに分けず、強いモデルにそのままやらせている。Terminal-Bench-Scienceのスコアが低いモデルに任せたら、判定エンジンの性能が出なかったから。

06

人間は何を握るか

コードの細部はもう追っていない。でも、技術を全部手放したわけでもない。

06 人間は何を握るか

握る所と、任せる所

握る

  • 設計の判断。例えば、同時に更新されたらどうするか(楽観ロック・悲観ロック)、長い処理をどこで回すか(SQSなどのキュー)、止める時に処理を落とさないか(グレースフルシャットダウン)
  • フロントエンドの構成と、AIのシステムの中身
  • 最初の設計。AIと対話しながら、人間がする
  • お客さん、他部門、他社のエンジニアと話せるだけの技術
  • AIの成果物をコントロールできる抽象度での理解

任せる

  • AIの改善の細部。弱点を洗い出して分野に分けたら、作業を頼むか、ディープリサーチで方法を探して順に試す
  • コードの詳細。何をしているか、どういうアプローチかだけ把握する
  • セキュリティのチェック
  • テストを書くこと

業務システムなら、仕様書からテストを書かせる。テストが通らなければ受け入れを止めて、仕様・実装・テストのどこが食い違うかを確かめる。PoCだと、仕様書が頭の中にしかないこともある。

06 人間は何を握るか

人が読む言葉は、人が見る

画面に出る言葉

  • 画面に出るAIのコメントの文を変える時は、前と後を3〜5例並べて、自分が合格を出してから入れる。
  • AIが「安全のため」と言って、画面のコメントのカードごと消そうとした。止めて、伏せるのは秘密や社内の言葉だけ、と決めた。
  • 人が読む文書は、出す前に「AIっぽさ」の検査をかける。

AIは厳密にやりたがる

  • 実務の問いに、研究の厳しさで「何日・何万円かかります」という見込みを出してくる。
  • そこまで要らないことが多いので、人が短い案に切る。何を捨てると何を失うかも、AIに並べさせる。

06 人間は何を握るか

判断を軽くする仕組み

約920件
決めたことの記録
約2週間で。多い日は1日120件ほど。後から書き換えない決まりのファイルで残す
HTML 1枚
説明や比べが要る決め
前と後、表、おすすめを並べた1枚をAIに作らせてから聞かせる
選択肢
質問のカードで聞く
自分は選ぶだけで済む
  • 1日に何十回も判断を頼まれるので、1回を軽くしないと回らない。
  • 書き換えない記録にしておくと、後から何をいつ決めたかを確かめられる。AIへの指示の根拠にもなる。

06 人間は何を握るか

自動化はまだ途中

  • ループを回してAIの性能を全部引き出す所まで、自分の技術はまだ届いていない。
  • 夜は自動で作業させて、昼は対話しながら手綱を握る。
  • だから構成とアーキテクチャを押さえておかないと、AIの成果物をコントロールできない。
  • ここはまだエンジニアの仕事だと思う。

Computer Useが便利

  • コードに残したくないE2Eテストも、Computer Useでやらせられる。
  • インフラからフロントエンドまで全部見るので、配備は全部の通しになる。だからE2Eが増えた。配備のたびに、検証環境で実際に1〜3件流してから受け入れる。

06 人間は何を握るか

安全に事故ろう

AIを使ってキャッチアップしても、初めての分野では罠を踏む。

踏んだ罠

  • 開発用と検証用の環境で、DBの認証情報が自動で切り替わる設定だったのに、アプリは起動の時に読んだ古い値のままで、DBにつながらなくなった。ヘルスチェックがDBを見ていなかったので、しばらく気づかなかった。
  • アクセス制限の設定で、通すべき通信まで止めていた。

だから決めていること

  • セキュリティとライセンスは先に固める。迷ったら厳しい方を選ぶ。
  • セキュリティが死ぬと、プロジェクトもお客さんも死ぬ。
  • 死なないインフラを作った上で、失敗する。

AIを使っても、分野ごとの運用の勘所は要る。実際に運用してみて、初めてつまずくことや分からないことが出てくる。事故は避けられないので、安全に事故る。

07

エンジニアはPMになる

10〜20並列にすると、誰が何をしているか、普通に分からなくなる。

07 エンジニアはPMになる

管理できなくなる

67件
1日のIssueとPR
一番多かった日。実験もインフラも研究もハーネスも、全部Issueに入れるから
50件超
同時に進んでいる依頼
AIが管理する依頼の一覧表の上限に何度も当たって、12→30→40→50→60件と上げた
2時間 → 5日
見込みのずれ
1〜2時間で終わると思った作業が、AIに聞くと「あと5日」

こうなると、発想が「プロジェクト管理の仕組みを入れよう」になる。

07 エンジニアはPMになる

AIのPMをAIにやらせて、自分はそのPMと話す

今やっていること

  • 依頼ごとに、AIが管理する一覧表に1行置いて、終わるまで消さない。
  • 担当のAIがいない依頼、期限を過ぎた依頼、引き継ぎが要る依頼を、プログラムが見つけて統括役に知らせる。
  • 相談役が毎時見回って、止まっている物を探す。
  • 終わりにしてよいのは、測った・報告した・自分が確認した、の3つの証拠がそろった時だけ。

本当はやりたいこと

  • AIにタスクを見積もらせて、ガントチャートを作る。
  • どのタスクをいつまでに終えるかを決めて、期限で管理する。
  • まだそこまでの仕組みは作れていない。

やっていることは、計画を立てる、せっつく、計画を見直す。現場のAIと認識がずれないようにする。PMの仕事をしている感覚に近い。

07 エンジニアはPMになる

AIの組織ならではの困りごと

AIどうしの伝言が止められた

AIから別のAIへ送る知らせが「自動の送信に見える」として、人が次に入力するまで止められた。ファイルの受け箱と、スマホへの通知に切り替えた。

終わったのに報告が来ない

作業は終わっているのに、報告が受け箱に届かないことが1日に3回あった。終わった作業と受け箱を照らすscriptを作った。

決まりを作っても、AIが守れない

会話は毎日替える決まりにしたのに、相談役は同じ会話のまま3日続いた。

08

これからのキャリア

技術の詳細を知らないと仕事にならない、という状態ではなくなってきた。

08 これからのキャリア

技術の総合職になっていく

  • 最近、Flutterエンジニアとして呼ばれることが少ない。インフラ、バックエンド、フロントエンド、セキュリティ、SREを全部見る、横断の仕事が多い。アプリ開発でもFlutterじゃなかったり、Webも見たりする。
  • キャッチアップは要る。でも前みたいに、技術の詳細まで知らないと仕事ができない、ではなくなってきた。
  • 「Flutterできます」「Railsできます」のように、特定の技術だけを強みにしてキャリアを築くのは、かなり厳しくなると思う。
  • 詳細はAIがやれる。人間がやるのは、もっと上流だったり、総合職のような仕事になる。

面白い矛盾

それでも誰でもいいわけではなく、経験は求められる。アプリならリリースの経験やリジェクトの対応のような業務経験は要る。分野の経験は要るけど、その分野を特定の技術ではなく総合的にやる、という形になってきている。

08 これからのキャリア

あと何年できるか

  • 5年後くらいには、さすがに厳しいかもしれない。今の技術総合職の仕事も、そのうちAIができるようになると思う。
  • そうなったら、たぶんAIを使って、生きる道を探していく。
月1,200円
3日くらいで作った個人開発 その1
今月。先月は600円
月2,000〜3,000円
個人開発 その2
  • めっちゃ小さいけど、お金になる物を簡単に作れる。ちょっと難しめのtoCでもいける。
  • 多産多死でやるのもあり。人間の能力が拡張されて、やれることは増えている。
  • なんとかなるんじゃないか、という気はしている。

09 まとめ

明日から試せること

  1. AIに頼む前に、終わったことを何で確かめるかを決める。
  2. 長い会話は、決まったことと次の作業を短く書き出して、新しい会話へ引き継ぐ。
  3. 同じ失敗を2回したら、注意の文を足すのではなく、チェックか記録の仕組みにする。

どれも、AIを1つ使う時から効く。並列にすると、これが無いと回らなくなる。

10 みんなに聞きたいこと

歓談のネタ

お金と並列

月にいくら使っている? 何並列で回している? どのモデルをどこに使っている? 安いモデルで作業させている人はいる?

管理

AIのタスクとスケジュールを、どう管理している? 見込みのずれはどうしている?

読む範囲

コードをどこまで読んでいる? 何を握って、何を任せている?

仕事とキャリア

呼ばれ方や仕事の中身は変わった? 5年後どうしていると思う?

ありがとうございました。

参考

参考にした記事

お知らせ

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うぇるち(@welchi_)は、株式会社Good Welchiで開発をしています。AIエージェントを、ルール・自動テスト・レビューで開発の流れに組み込むところから手伝えます。モバイルアプリ(Flutter)や技術顧問の相談も、お気軽にどうぞ。

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